高梨屋朱里

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4月21日 天気晴天。 ポカポカと暖かい日が続く、ある春の日の事、僕はいつも通り5時あたりに起床する。 「ん~……」 上体をベッドから起こし、僕は精一杯背伸びをする。 それが済んだ後、僕はベッドから下りて東雲学園の制服に着替える。 東雲学園の制服はブレザーなのだが、基本的制服についての校則はなく、夏冬どちらの制服を着ても登校してもよいとの事。 僕は普通にワイシャツにネクタイという格好で、いつも学園へと登校する。 「さて、今日も朝食と弁当作り頑張るか」 学園指定の鞄の中身を確かめながら言う。しかし、こう思ったのは下の階に下りてからだった……。 下の階に下りて、洗顔してからリビングに入ると、 「あ、おはようございます」 にこやかに、台所に立つ金髪碧眼の女性が笑顔を見せてきた。 一瞬、誰!?この人!と思ってしまったが、すぐに思い出した。 有楽・リィン・エーニア。 彼女曰く、父さんの命令で鳥羽家のお手伝いさんとして来たらしいのだけど………………、まぁ、一人くらいお手伝いさんが欲しいとは思ってたからいいんだけど。 「あ、えっと、おはようございます……?」 挨拶すると、彼女は微笑む。不覚にも、その笑顔が可愛いと思ってしまった。 「しかし、有理様は起きるのが早いんですね」 感心したように言ってくる。 「早く起きるのはいい事ですが、少し早すぎませんか?」 「いえ、僕にとってはこれが当たり前なんです。なんせ、この家の家事を任されてますから」 そう言って、僕は台所の近くに掛けてあるはずのエプロンを探す。しかし、 「あれ?」 そこに、僕が愛用しているエプロンはなかった。 「どうかなさいました?」 「ええ、エプロンがなくて……」 「……もしかして、これですか?」 そう言って、彼女は自分の身体を僕に見せてきた。……あ、よく見れば、彼女は僕愛用のエプロンを掛けているではないか。 「なんだ、あなたが使っていたんですか――って、待ってくださいよ?僕のエプロンを使ってる?という事は……」 バッと、台所を見る。そこには、火で煮込まれてる鍋と切ってる途中の人参があった。 「……あ、あのー」 「はい?」 「家事は……僕の仕事だって……言いませんでした?」 その問いに、彼女は頷く。 「はい。ですが、これからはこの私がします。お手伝いさんですからね」
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