高梨屋朱里

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その答えに、僕は、 「……」 開いた口が塞がらなくて……。 「で、でもでも!今まで当たり前のようにやってきたのをやらなくていいと言われても、困ります!僕にも家事をさせてください!」 こうやって、1日でも欠かすと、いつか家事をするって時に忘れそうで、怖い。 「え……、でも私はお手伝いさんとして来た訳ですから、家事は私に任せて、有理様はゆっくりなさって――」 「お願いします!」 彼女の言葉を最後まで聞かずに、僕は土下座で懇願した。 「ちょっ、有理様!?」 彼女の目には、驚きが宿り、土下座している僕を見て、しゃがみこんだ。 「家事が……したいんです……」 「ですけど……それじゃあ、私の仕事が……」 「じゃあ、一緒にしましょう!それなら大丈夫でしょう!?ね!?」 家事をやるな=僕に死ね、と認識してしまっている僕はそう言った。すると、彼女は参ったと言わんばかりに溜め息をついた。 「分かりました。じゃあ、分担してやりましょう」 その言葉に、僕の表情は輝いた。 「ありがとうございます!」 「その代わり、条件があります」 ……条件? 「私はお手伝いさんで、鳥羽家の使用人です。ですので、敬語は必要ありません」 「えぇ!?」 「それだけじゃありません。私と有理様はそう大して歳は離れていません。ですので、私の事は“リィン”とお呼びください」 「……どうしても呼び捨てじゃないと、駄目ですか?」 聞くと、笑顔で、 「敬語ですよ?」 うっ……!しまった!ついさっきと同じ口調で話しちゃってた。 「……ど、どうしても呼び捨てじゃないと……だ、駄目……?」 今度は何とか言えた。 「呼び捨てが嫌なら、ちゃん付けでも構いませんが?」 「ちゃん付け……。リィンちゃん……とか?」 「はい!」 うわっ!眩しい程の笑顔だ。そんなにちゃん付けで呼ばれるのが嬉しかったのかな? 「有理ちゃん」 …………有理“ちゃん”? 「……え?」 「っ!す、すみません!口が滑りました!」 慌てて、リィン……ちゃんは謝ってきた。いや、そこまで謝らなくても……。 「いや、別に気にしてないけど……?」 「すみません!すみません!」 「だ、大丈夫だよ?どうしたの?」 「……いえ、本当に口を滑らせただけですから……」 沈んだ顔で、そう言う。 一体、どうしたっていうんだろう?
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