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小さな会話が終わると、不機嫌そうに蜜谷香寺さんがこちらを見ていた。
「な、なに?」
「べっつにぃ~」
と言っているが、明らかにそんな顔ではない。
そんな中、ポンっと鷲に肩に手を置かれ、
「まぁ、頑張れ」
なんて言った。…………何を?
「えっとな、この『私は彼の事を愛したら』という文でな」
昼休みが終わり、6限目をやっていた。
6限目は国語だった。
「そんでな、ここの『愛したら』は仮定系で、もしもなになにだったらという文だ」
ふむふむ。
僕は今、先生が言った事をノートに書く。
後ろの席に座る鷲は、授業中にも関わらずぐぅぐぅ寝ている。日々、情報を収集しているため疲れているのであろう。
(でも、朝と昼休みは全然眠たそうじゃなかったけど……)
神奈鷲。不思議な親友だ。
そんな事を考えていると、
トントン。
指で、隣の席に座る女子生徒に肩を叩かれた。
僕の隣に座る女子生徒は、蜜谷香寺架名さんで蜜谷香寺さんを見る。すると、蜜谷香寺さんは自分のノートを机の端に持ってきて、僕に見せてきた。
そのノートを見ると、
『今日の放課後、屋上……あいつの所に行くの?』
と、書かれていた。
あいつ…………?……。ああ、高梨屋さんの事か。
その言葉の意味を理解した僕は、急いで自分ノートに書いて、蜜谷香寺さんに見せた。
『行くよ』
『どうして?』
その問いに、少し悩んだが、書く。
『僕の秘密を教えに行く』
「……」
僕が書いた文を見て、蜜谷香寺さんはペンの動きを止めた。しばらくして、
『分かったよ』
と書かれた。そして、続いてこう書かれた。
『でも、絶対にあいつとは仲良くしないからね。そこんとこ、よろしく』
その文に、僕は苦笑いをした。
放課後になり、僕は屋上へ向かう。
階段を上がり、扉の前に立つ。
大きく深呼吸して、僕は扉のドアノブに掴み、押す。キィィっと金属音が響き、扉が開かれる。
そして、その向こう側には、
「あら、意外と早かったわね」
夕陽をバックにした、美少女がそこにいた。
「まぁ、HRが終わるのが、早かったからね」
僕はそう、美少女―高梨屋朱里さんにそう言う。
「あ、敬語止めてくれたんだ。対等な立場な感じで話せるから、嬉しいわ」
そう言って、高梨屋さんは笑う。
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