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「お母さん~。これは?私に似合ってる――」
叶さんに言い掛けて、架名さんは僕と目が合った。そして、
「うわあっ!?い、いたの?有理君」
驚きながら開かれたカーテンに顔ごと身体半分を隠し、隠してない顔半分で僕を見ながら、聞いてきた。気のせいか、若干、架名さんの頬が赤く染まっているような……。
「うん。偶然……だね」
「う、うん……。凄い偶然……」
そう言いながら、架名さんは恐る恐るカーテンから隠してた身体半分を出し、試着室から出た。そして、僕の前に来る。
架名さんが着ている浴衣は黄色で、あちこちに花柄があった。それに、普段下ろしている黒い長髪もポニーテールにまとめられていて、なかなか似合ってて、可愛かったりする。
「どう……かな?変なとこ、ない?」
くるりと一回転しながら聞いてくるので、僕は素直に頷いた。
「ないない。凄く似合ってる」
「ホント!?」
目を輝かせながら、架名さんは僕に聞いてきた。僕はもう一度、頷く。
「お母さん。私、これ買う!」
「はいはい。好きにしなさい」
「分かった!」
そう言うと、架名さんは先程までに入っていた試着室に入り、カーテンを閉めた。……かと思うと、カーテンはすぐに開かれ、私服姿の架名さんが試着室から出てきた。
さっき試着してた浴衣を持ったままレジに行き、財布を取り出している。
「……有理君の“似合ってる”の言葉を聞くと、即買いなのよね。あの子」
呆れながら言う叶さんの言葉に、僕は苦笑するしかなかった。
そうしていると、もう一つの試着室のカーテンが開かれた。
その音で、その方向を見ると、これまた綺麗な美少女が立っていた。
その美少女は少し躊躇いながら試着室から一歩出て、僕の方を向いた。顔はやや、朱に染まっていた。
「ど、どうかしら?に、似合ってる?」
「……」
その姿に、僕は呆然としてしまった。……あまりの綺麗さに。
「……な、なんとか言いなさいよ」
「……は」
「……は?」
「は……初めましてと言いたくなる気分だよ。朱里」
「はぁ?」
何言ってんだ、こいつ、みたいな顔された。僕は言葉を付け加えることにした。
「別人みたいに似合ってるんだよ。朱里はもともと美人だから、何着ても似合うけど……、その浴衣は格別に似合うね」
「あ、あら、そう?」
「う、うん」
「……これ、買うわ」
そう言って、朱里は出した足を試着室の中に入れて、カーテンを閉めた。
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