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普段の朱里とは違う、別の彼女を見た僕はドクンドクンと心臓が脈打つのを感じながら、カーテンが閉まるのを見ていた。……すると、
「……有理君の本命は……朱里ちゃんなの?架奈じゃなくて……?」
自分のことじゃないのに、何故か悲しそうに叶さんが僕に聞いてきた。
「ほ、本命?朱里が……ですか?」
叶さんの方を向きながら聞くと、叶さんはコクコクと頷いた。その様子は、とても一児の母親には見えず、どう見ても女子高生にしか見えなかった。
「だって、浴衣買いに朱里ちゃんと来てるじゃない!……あぁ、有理君を息子として蜜谷香寺に歓迎したかったよぉ……」
シクシクと泣き始める叶さん。ほ、本物か?その涙は本物なのか!?
「あ、あの男の子、彼女泣かしてる~」
「いや、あれ修羅場じゃない?浮気がバレたーとか」
周りから聞こえてくるヒソヒソ話。……叶さんの本当の年齢を知らない人に、僕が彼氏と思われても仕方のないことかもしれない。彼氏じゃないのに……、母親とその娘の友達という間柄なのに……。
「お母さん!」
と、そこに一隻の助け船が来た。
架名さんが叶さんに軽くチョップすると、叶さんは「あいたっ」と言って、泣き止んだ。
「だってぇ、有理君が蜜谷香寺家に養子に行きたくないって言ってぇ」
僕は何も言ってないはずでは?
「だってぇ、じゃないの!有理君にだって、自分の意思ってのがあるんだから、無理強いしちゃいけないの!……そりゃあ、養子に来るって事は私と結婚するって事だから、嬉しくない訳ないけど……」
チラッと、分かりやすく僕を見てくる架名さん。そりゃあ、架名さんは美少女だし「結婚してぇぇぇぇぇ!!!」と言う男子も少なくはないけど、僕は……
「好意は嬉しいよ。でも」
その中に、入ってない。
「女としての魅力がない!?やっぱり身体だけの女はやだ!?」
「いや、架名さん、身体だけじゃなく、性格もいいと思うけど……」
少し苦笑してから、僕は真面目な顔で架名さんの顔を見て、口を開いた。
「僕には、アメリカにいた時に出来た友達がいるんだ。でも、その子とは酷い別れ方をして、今まで会ってないんだ。それに、僕の記憶が曖昧でさ、その子の顔と名前が思い出せないんだよ。だからさ、その子のことを思い出せるまで、僕は誰とも付き合えない」
「……そっか」
そう言った架名さんは、少し淋しそうな顔をしたが、すぐに笑顔になって僕の肩を叩いた。
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