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「じゃあ、有理君の記憶が戻る手伝いをしようかな?幸い、お金なら持ってるし」
「私も協力するわよ?」
そこで、カーテンが開かれ、私服姿の朱里が後ろからそう言ってきた。そんな朱里を見た瞬間、架名さんの顔色が変わった。
「ゲッ!朱里!」
「ゲッ、とは失礼ね、架名」
そう言いながら、朱里は試着室から出て、さっき着てた浴衣を持ってレジに向かった。そして、買い終えた朱里は架名さんと対峙した。
「高梨屋家には朱里専用の浴衣がないんだね」
「毎年、成長して買いに来てるあんたには言われたくないわ」
「あぁ?」
「なによ?」
睨み合う二人。二人の中からすごい険悪な雰囲気が出ていて、服を見ていたほかのお客様から色んな意味で注目された。
「……ま、いいわ。私はこんな場所であんたと喧嘩して恥をかく趣味はないわ」
そう言って「私、大人ー」的な態度を取って、架名さんから離れる朱里。……いや、全然大人な態度じゃないですから。架名さん、朱里の態度に怒ってますから。
「わ、私だってないよ!」
「あらー、架名ちゃんはいい子でちゅねぇ」
「子ども扱いしないで!私はあなたと同じ17よ!」
「あら?そうだったの?知らなかったわ」
「ムキャアアア!」
「さ、有理。メス猿は放っておいて、昼食にしましょ。浴衣選んでくれたから、奢るわ」
そう言って、僕の手を掴み、服屋から出ていこうとした時、
「待て、ゴラァ!」
完璧にキャラ崩壊した架名さんが、追い掛けてきた。
「まっず!有理。逃げるわよ!」
「ええ!?……いいのかなぁ」
と言いつつも、僕は朱里と逃げて、五条大橋デパートを後にした。
外に出れば、暑い日差しが僕たちを真上から襲ってきた。
「さて。有理。あんた、何が食べたい?」
「へ?何がって?」
首を傾げると、朱里は「さっき言ったじゃない」と少し呆れたように言ってきた。
「昼食、私が奢るって言ったじゃない」
「……あ」
そう言えば、さっき言ってたな。
「思い出したわね。で、何が食べたい?」
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