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ただ、最初の方は片目だけに慣れなくて、色んな所でぶつかったりした事もあったが、今はもう慣れ、さすがにそんな事はなくなった。
「さてと、何作ろっかな?」
僕はエプロンを付け、台所へと向かい、冷蔵庫の中を確認する。
「わっ、卵がもうすぐなくなりそう……。帰りに買ってこよ」
卵を二個取り出し、僕は冷蔵庫を閉める。それと同時に、誰かが階段から下りて来る気配がした。
その方向を振り向くと、扉が開いた。
「おはよ、由香」
そこには、寝癖いっぱいの長いか短いかよく分からない長さの髪の少女が立っていた。
まだパジャマを着て、締まりのない顔をしているから、完全に目覚めている訳ではなさそうだ。
「んー……」
「今日は早いね。何か、あった?」
「んー……、部活の練習……」
「そっかそっか。とりあいず、顔洗っておいで。その後に目の覚めるコーヒー淹れてあげる」
「んー……」
少女はそれだけ言って、のんびりと洗面所へと向かって行った。
彼女の名前は鳥羽由香。僕のたった一人しかいない妹。血は繋がっていないが、ほかの兄妹よりも仲がいい事は自信を持って言える。
僕の一つ年下で、手芸部に所属している。って、手芸部朝練あるんだ。初めて知ったよ。
父親は海外で仕事をしているため、僕は妹の由香と二人暮らしである。
「兄さんー……、顔、洗ったー……」
一応、この子男子にモテるらしいが……今のこの子を見たら幻滅するだろうか。
「じゃあ、はい」
コーヒーの入ったマグカップを、由香に渡す。
由香は「んー……」とだけ言って、僕からマグカップを受け取って一口啜る。そして、
「にっがっ……!ちょっと兄さん!このコーヒー苦過ぎるんですけど!?」
眠たそうな目をパッチリを開け、僕にそう言ってきた。
「そりゃあ、無糖だもの。苦くない方がおかしいってモンだよ」
「だから、そういう事を聞いてんじゃなくて……」
「目、覚めたでしょ?」
「……」
僕の問いに、由香は言葉を詰まらせた。図星だな。
「ほらほら、今から朝食作るから、制服に着替えてきなさい。髪もちゃんと寝癖を直して」
「う……、うん、分かったよ」
そう言うと、由香はリビングを出て、階段を上がっていった。言う事を素直に聞いてくれるいい子だなぁ。
ま、あの子が下りてくる前に、パンでも焼いとこ。
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