921人が本棚に入れています
本棚に追加
小学校からの付き合いで、男友達の中では一番仲がいい。
「……で、今日もやってんの?」
チラッと、一万円札をぴらぴらさせている女子生徒を見る。
そんな問いに、鷲は疲れたように頷いた。
「いいとこのご令嬢さまなのによ……、勉強が出来ないんだってよ。経済力とかは無駄にすげぇのに」
経済力がすごいのなら、勉強も出来るのでは?というツッコミはなしにしておく。
蜜谷香寺架奈(みつやこうじかな)。
このクラスの委員長にして、生徒会副会長。
有名な四大家系の一種、蜜谷香寺の長女でもある。
才色兼備とはほど遠いが、容姿は美人の部類に入る。
「鷲は蜜谷香寺さんに宿題見せに行かないの?見せてくれたら一万円だって言ってるけど……」
「俺が人に宿題見せれる程、頭いい奴だと思うか?」
「自分でそういう事言わない方がいいと思うんだけど……」
「自分の事を卑下にして語る。それが俺、神奈鷲だぜ!」
よーく分かってる。
「まぁ、それはともかく。今日、ちっとお前の家に寄っていいか?」
鷲の突然のお願いに、僕は濁したように答えた。
「いいけど……」
「けど?」
「鷲の好きそうなエロ本はないよ?」
「そうか。そりゃ残念……って、好きじゃねぇ!!」
僕の答えに、鷲は激怒した。
「そうだったっけ?」
「そうだ!」
「まぁ、いいや」
「よくない!せめて俺がエロ本好きだっていう誤解を解いてくれ!」
鷲の必死な剣幕に、僕は「分かった分かった」と誤解を解いた。
「僕の家に来るのはいいよ。両親もいないし。でも、今日は帰りが遅くなりそうなんだよね」
「何故だ?」
鷲が聞いてきたので、僕は「うん」頷いてから語り始めた。
「今日はボランティアで、図書室の本棚の修理。ちょうど古くなってんだって」
「ボランティア、ねぇ」
そう言って、鷲は僕を見て、「うんうん」と頷いた。
「な、何?」
「いや?お前にピッタシだなって。……まぁ、頑張れ」
ポンと肩を叩かれる。
「だもんでさ、僕の家に寄るなら妹の由香を訪ねてよ。今日は手芸部、帰り部なかったはずだし……、家に入れてくれると思うけど……、どうしてまた僕の家に――ああ、藍紗ちゃんとケンカしたのか」
「がはっ!」
ドンピシャ。僕の言った事は見事に当たり、鷲は派手にぶっ飛んだ。
「……何故……そう思った……?」
フラフラになりながら、鷲は僕の自席へとたどり着いた。
最初のコメントを投稿しよう!