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「だってさ、鷲が僕の家に寄る理由って大抵がそうじゃん」
「……そういえば、あいつとケンカした時はいつも有理の家へ寄ってたような……」
やれやれと少し呆れながら、どうしてケンカしたのか聞いてみる事にした。
「藍紗ちゃんとのケンカの理由は?」
「……。少し長くなるんだが……、それでもいいか?」
一限目が始まる時間まで、まだまだある。僕は頷く事にした。
「藍紗がある日、コンビニで百円のプリンを買ってきたんだ」
……先が読めたが、無視して鷲の話を聞いた。
「んで、とっても美味しいって皆言ってたから、一口、ほんの一口……食べてみたんだ」
「それがバレてケンカ、と」
苦々しく、鷲は頷いた。
「俺が悪いのは百を通り越して千も承知していた。バレた時は土下座もして謝ったよ」
プライドないなぁー。
「でも、あいつは許してくれなくて……、顔も見たくないって」
「いつもの事だね。藍紗ちゃんのほとぼりが冷めるまで、僕の家でゆっくりしていくといいよ。今、由香にメール送っておくから、帰りは由香を尋ねて」
僕は制服から携帯を取り出し、由香にメールを送った。
鷲は由香と顔見知りだし、どちらかと言うと、仲がいい。だから、由香も了承してくれると思うんだけど……。
と、思っていたら、僕の携帯にメールが届いた。差出人は……由香だった。
「……」
メールの内容を見て、僕はホッと安堵した。
「いいってさ。よかったね、鷲」
「マジか!?いやー、よかったよかった。これで一安心だぜ」
鷲は胸を撫で下ろしていた。鷲、それで一安心する前に、藍紗ちゃんと仲直りする方法を考えようよ。
なんて、考えてたら、
「ん?あ、鳥羽君だ。鳥羽くぅ~ん!」
我がクラスの委員長、蜜谷香寺さんがいきなり僕の名前を呼ぶと、僕の席へと近付いてきた。
「あ、おはよう。蜜谷香寺さん」
「おはよ!鳥羽君!」
元気一杯の声を出して、挨拶してくれる蜜谷香寺さん。こうして近くで見ると、なかなか美人だ。
「オッス、蜜谷香寺」
「おはー、神奈君。いや、今は君に挨拶している場合じゃないわね。用があるのは、鳥羽君、あなたよ!」
ビシィと、人差し指で指される僕。
「へ?僕に用?何かあるの?」
僕の問いに、蜜谷香寺さんは頷く。
「今日のボランティア、確か鳥羽君は参加するはずよね?」
今日のボランティア……。あ、本棚の修理か。
「え……?う、うん、参加する……けど?」
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