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すぅっと意識が浮上して、オレはいつも通りの朝を迎えた。ベッドから立ち上がり、すぐ傍の窓を開ければ、朝特有の肌寒い風が中に入って来る。
静かな空間。ここは個室故に、好きなことをしても他の患者に迷惑がかかることはない。
――ピチチ…、チュンチュン――
どこにいるのか、鳥の鳴き声がした。今日の空には、雲が少なくとても青い。突き抜ける青、とでも例えられるスカイブルーだ。
オレはベッドに座り、窓から見えるその青い空を、ぼうっと見つめた。この病室も、随分とオレの色に染まったものだ。恐らく、家の自室よりも物がある。
「……」
初めてここにやって来たのは、確か7歳の頃だった。その時のオレは、まだ小学一年生のクソ生意気なガキ。
そんなガキだったオレがなぜここにいるのか。きっかけは、学校の体育の授業をしていた時だった。
あの時は夏だってのにそんなに暑くもなく、皆と鬼ごっこをしていた。じゃんけんで負けたオレは、先生や他数人の鬼と共に、逃げ回る友達を追っていた。
「おはよー春人(ハルト)君!点滴換えに来たよ~…て、あら!ダメでしょ、窓開けちゃ」
換えの点滴の袋と、体温計などを手に持った女の看護師、真東(シンドウ)さんが時間通りにやって来た。
毎回来てるもんだから、多分オレの担当とかなんだと思う。
「いーじゃん、別に。今日は調子良いし」
「そんなこと言って。また熱出るかもしれないでしょ?―――ほら、腕出してくれる?」
そう、あの時もそうだった。逃げ回る友達を追っていた時、突如高熱を出した時みたいな目眩がして、オレはその場に倒れた。大した運動でもなかった筈なのに、うまく息が出来なくて、心臓が嫌な感じに高鳴ってたのを今でも覚えてる。
「はい、おしまい。じゃあ後は熱計ってね」
「へえへえ」
そして、目が覚めた時にはもう、オレはここにいた。後で親から入院することを聞いたが、退院の目処(メド)は立っていないらしく、そっちは教えてもらえなかった。
知らなかった。オレの身体が弱かったなんて。
カッコわる。男で身体弱いとか、マジ有り得ねぇよ。
――ピピピピ――
「はい、鳴った」
「んー、ありがと。さ~て、何度かな?」
「……」
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