一光り 《毎日が変わる日》

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    入院する前は、小さかったこともあって家族とよく行っていた。それに花火はいつもこの病院の屋上から見れるし、毎回冬弥にぃは祭に行って何故か決まってチョコバナナ買ってくるし。 けど、病院に入ってからは、全然行っていない。 親は共働きだし、冬弥にぃもチョコバナナは買ってくるけど本当はバイトだし。だからオレに構う時間がない。別に行きたいって訳じゃないけど。 「ヒロナちゃんに頼んでみるから、一緒に行かない?」 窓から離れ、ベッドの側の椅子に座って尋ねてくるナミに、正直オレは戸惑った。こんな機会、今までなかったから。 でも、多分行けないと思う。医者が許可しなさそうだ。あの人かなり真面目だから。 「心配ないよ。私付き添うし、車椅子も一応借りてく。ちゃんと私がヒロナちゃんや先生の言うこと聞いとけば、きっと許可してくれるよ」 「え」 うわ…、久々驚いた。なんかこの人、オレの思ったことにどんぴしゃで喋ったんだけど。 オレの表情から『心配してる』と読み取った?…あんま顔に出るタイプじゃない筈なんだけどな。 「ね、行こうよ」 「……」 「行こうよー、春人君ー。屋台あるよ、花火もあるよ!いっぱい食べ歩こうよ!」 「……」 「屋台のムキムキなおじ様達が君を待ってる!」 「気持ち悪いわ」 なんか、この子オレよりワクワクしてません?何この幼児相手にしてるような感覚は。 「……分かった。オレは良いから、行くなら許可、貰ってこいよ」 「ぅおっしゃ!」 半ば仕方なく、みたいな感じでオレはOKを出す。よく考えたら久々に病院出られるわけだし、チャンスは活用すべきだ。 ナミはオレの了解を聞くと、早速許可を貰うべく小走りで部屋を出て行った。 ていうかもうちょい可愛い喜び方…。 「ダチとは行かねーのか、あいつ」 ダチとは、“外の”友達。普通なら女子同士で行くとか、彼氏とかと行くだろ。そーいうもんじゃねーの? でも、さっきの様子じゃナミが誰かと祭りに行く約束をしてるような感じはしなかった。 「…変な奴」 誰に聞かれる筈もないのに、思いの外オレの呟きは小さいものだった。その呟きをさらって行くかのように、窓から風が緩やかに室内に吹き込んだ。  
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