一光り 《毎日が変わる日》

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    「36.7分。あら、本当に調子良いみたいだね。じゃあ窓はそのままでも良いけど、なるべくはベッドに入っててね」 第二の家、というかむしろ、こっちの方が家なんじゃないかと思うくらい、オレは長くこの病院に入院している。 ちなみに小学校で止まった勉強なんかは、院内学校なんてもので引き継いでいた。別に大病を患っているとかじゃないから、身体に負担がかからない程度なら一応問題なく勉強出来るんだ。 「じゃあ後でね。少ししたら朝ごはん持って来るから」 「……」 オレが返事も頷きもしないのはいつものこと。しかし、彼女はそんなオレの態度にはとうの昔に慣れてしまっていたらしく、大して気にもせずに部屋を出て行った。面白くない。 ちなみに、オレには冬弥(トウヤ)という名の兄がいる。今時の服装や髪型など、兄は外界から遮断された弟(オレ)に沢山の事を教えてくれる。この茶髪だって、全部冬弥にぃに教えてもらったものだ。 それが嬉しい反面、オレに絶望を与える唯一のものでもある。どんな話を聞いても、それは結局オレには遠いもの。やりたいとか、やってやるとか、そういう希望は持つだけ無駄だ。 「…こんなんだったら、生まれて来ない方が良かったかもなぁ」 オレの毎日は、いつも同じ。一日最低二回の点滴、体温測定、体調検査。あとは三度の食事くらい。漫画やテレビを見たり、屋上や病院の庭に出てその日その日を色付けするが、結局は変わらなくつまらない日々。 小学校の時の友達はもう高校生になって、オレに構う余裕もなくなったらしい。オレも標準強度の身体だったら、皆みたいに高校生をやってたかもしれないのに。 「……」 再度空に向けていた視線を左腕に移してみた。そこには、当然の如く刺されている針と管。 自分に繋がれたこの点滴の管が、ものすごく忌ま忌ましい。だから時たま、今すぐこんなの引っこ抜いて、こんな部屋から出て行ってやろうかって思う時があるが…そんなことすれば、 「死ぬなー、多分」 実際、一度だけ脱走紛いのことをしたことがあるから分かる。 その時オレは13歳で、いわゆる反抗期ってやつだった。    
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