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「……ふーん。真東さん姪いたんだ」
「でね、その理由って言うのが、君にも関係してくるんだな~、これが」
「……ふーん?」
何故か得意げな顔でオレを見る真東さん。オレに関係があるって……あ、まさか。
「オレに“一目惚れしちゃったー”とか?」
「……………」
途端に真顔に変わる真東さんの顔。流れる沈黙。
ピチョン…と、いつもは聞こえない筈の点滴の音が聞こえた気がした。
うっわやっべ、スベったコレ。
「……………なワケないか」
圧し負けた。いつもウザいくらいニコニコの真東さんのこの顔は、正直かなり怖ぇ。
「ん~、残念ながらそういうんじゃないんだ。確かに春人くんは中の上だとは思うけど」
「その基準はなんですか」
「君に関係があるって言う理由はね。春人君の、“友達になりにくる”からなの」
「…、は?」
思わずオレはベッド脇に立つ看護師を二度見してしまった。真東さんの表情は、いつもの表情に戻っている。
ていうか、そんなことはこの際どうでもいい。今、この人はなんて言った?誰が、誰の、“友達になりにくる”って?
「何だよそれ、所謂(イワユル)先生の配慮ってヤツ?オレがあんまり文句言うから?」
「まっさか!違う違う。これは、私の独断だよ」
「……いーのかよ?勝手に」
「だーい丈夫♪―――多分!」
「多分……」
真東さんはその後、すべて食べ終えたオレを一瞥して、開(ヒラ)けた窓の傍に立った。
「……あの子にも、必要だと思ってたし。それに、友達を作るくらいなら、先生のお咎めもないと思うの」
「意味わかんないし」
「確かに、春人君の暇潰しの相手をしてもらうつもりもある。…けどね、お願い、春人君。あの子を助けてあげてね」
「は?」
そう言った真東さんの顔は、心配の色を瞳に含んだ真顔だった。でも、さっきとは少し違って、怖くはない。
初めて見たかも、しれない。真東さんの、真剣な顔。
「じゃ、あの子午後には来ると思うから。
―――あんまり身体冷やし過ぎないようにね」
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