一光り 《毎日が変わる日》

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    真東さん、だったらまだ良かったんだけど。 カートを押して扉を開けたのは、いつも見るニコニコ顔の看護師ではなかった。オレは微妙にまだ上半身裸で袖に腕を通したまま固まってるし、入って来た人物も固まってる。 言いたいことは色々あるし、この沈黙も何か気まずいが、まずは。 「そこ、閉めてくれると助かるんだけど…」 いくらオレでも、少しは恥じらいくらいある。こんなところを入院中のご老人達に見られたらどんな目をされるか。なんか生暖かくて気持ち悪いあの目はムリ。堪えられない。死ぬ。 入って来た人物はハッとして、でも案外普通な調子で「あ、そっか。ごめん」と、扉を閉めてくれた。 相手が過剰に驚いたりしなかったせいもあってか、オレはあまり気にすることなく着替えを再開し、終了した。 で、ふと浮かぶ疑問。 「どちらさま?」 今更か、と思いつつ、オレはベッドに腰掛け、カートを押して中に入って来た人物を見た。 ショートの黒髪に、二重の女の子。服装は白衣じゃなく学校で着る制服で、明らかに病院関係の人間じゃない。多分、高校生だ。 女の子はオレへ一度下から上へ目を向けて、それから目が合うとニコリと微笑った。 そして、一言。 「合格!」 「なにが」 「いや、あはは。私って結構面食いで。だから“合格”」 真東さんとはまた違った笑顔でそう言いながら、彼女は簡易テーブルに食事を置いた。あ、今日は焼き魚か。 「……それ、もしかしなくても顔?失礼だな、あんた」 「ごめんごめん。でも今日はこのテンションで行くって決めてたから!」 「あっそ」 イマイチ意味がよくわからないが、オレは昼食のため箸を取った。焼き魚に添えてある卵焼きに狙いをつけ、箸先を突き刺す。 「で、どちらさまで?」 「あ、あれっ?ヒロナちゃんから聞いてなかった?私ヒロナちゃんに言われて来たんだけどな」 「は?」 ヒロナちゃん?て、誰だ?そんな人近くにいたっけ? 女の子の口から出て来た知らない名前に、オレは顔をしかめる。自分から色々言ってこないところから察するに、彼女は俺が思い出すのを待つつもりらしい。 部屋の端に置いてあった椅子を持って来て、女の子はオレのいるベッドの傍に座った。 「ヒロナ…、ヒロナ…?」    
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