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食べるのを一旦ストップして、考えに耽(フケ)る。ヒロナって名前の人なんかいた覚えがない。“ナ”なんて付くから女の人なんだろうけど。
「――春人君~。ちゃんとご飯食べてる?」
答えが出なくて悶々としていた時、不意にまた扉が開いた。
うん、次は間違いなく真東さんだ。
「うっせーな…」
「あ!こんにちはヒロナちゃん♪」
「は?」
……え?ちょっと待って。
女の子は振り返って真東さんを見ると、明るくそう挨拶した。真東さんは真東さんで、「こんにちは。来るの早かったね」なんて言ってる。
唖然としたオレと、にこやかに挨拶を交わした二人。真東さんは扉を閉めると、女の子の傍に立ってオレを見た。
「朝言ってた話、覚えてるよね?春人君。この子がそうだよ」
「………」
言って、またニコリと笑う真東さん。
おいおいちょっとなんだって。ていうか、真東さんの下の名前って何だっけ?えー、確か……
「…“真東ひろな”…?」
呟くように言って女の子を見遣れば、正解とでも言うように頷いて見せた。…てことは、つまり。
「私、椛田 南深瓜(モミジダ ナミウリ)。よろしく」
ニコッと幼く微笑った彼女に、オレは口あんぐり。いや、ホントにあんぐりはしてねーけど。ただ、まさかこの子みたいな子だと予想してなかったから。
ちなみにオレの予想は、おしとやかで大人しくて、ふんわりした雰囲気を持つ長髪の女の子。この子絶対正反対だろ。活発でやんちゃっぽいんですが。
「あぁ、オレは…」
「沖崎 春人(オキザキ ハルト)君、だよね。ヒロナちゃんから教えてもらってた」
「あ、そ…」
にしても、珍しい名前だな。南深瓜なんて名前、いなさそう。つーか名前に“瓜”…?
考えてるうちにすっかり食べ終えたオレは、珍しくも完食だった。真東さんなんかは「おー!」なんて歓声をあげてる。
「じゃあこれ、持って行くね。
ナミちゃん、ゆっくりしていって良いから」
「はぁ~い」
テキパキとカートに空の食器を片付けて、真東さんは「じゃあね」と部屋を出て行った。残されるは、オレと“瓜”さん。
オレは彼女一瞥して様子を窺うと、気になっていたことを訊いてみることにした。
「――あのさ」
「ん?」
「南深瓜さんって、なんでオレなんかの友達になろうなんて思ったわけ?」
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