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あー、些(イササ)か直球過ぎただろうか。でもやっぱ気になるもんは気になる。
恐らくこの子には、もう“外”に友達がいる。なのに入院してる奴とわざわざ友達になろうなんて普通思うか?思わないだろ。今まで面識だってなかったのに。
オレの問い掛けに意外にも南深瓜は驚いた様子もなく、話し始めの合図のように、一度小さく頷いた。
「気分!」
――…え、えぇぇぇぇええぇ……。
「それだけ?」
「うん、まぁ。あとは、そうだなぁ。ヒロナちゃんから春人君の人柄とか聞いたし」
「………」
なんだか豆鉄砲を食らった気分だ。単純過ぎるというかなんというか。マジでそんな理由?変に深読みしようとしたのがなんかバカみたいなんだけど。
「南深瓜さんって…」
「あ~それそれ!」
「は?」
単純、と続けようとしたオレの言葉に、いきなり声をあげた南深瓜。なんだよ一体。
「その“南深瓜さん”って、言うの長くない?てか長いよね」
「え、あー…」
「私のことはナミで良いよっ」
そう言って、ニコッと笑う彼女はどこか幼い感じがした。
そのせいか、なんだか毒気を抜かれた感覚。
「ん、じゃあナミ」
「うん!
―――いっつも思うんだけど、あんまりないよね、こんな名前。瓜とか」
「確かに、聞いたことはない、な」
こいつ、自分でも珍しいとか思ってんだ。瓜もだけど、女の子で四文字の名前自体そんな多くないと思う。
ナミは椅子から立ち上がると、窓際に背を向けて立った。彼女の後ろに、窓を通した青い空が広がる。いつも見る景色に初めての、異色。
「私、秋生まれなんだよね。で、その誕生花が瓜だったの。それで名前に“瓜”って字入れたんだって」
「へぇ」
「春人君は~…、やっぱり春生まれ?」
…やっぱ、そうきたか。
「いや、オレ夏生まれ」
「えっ!」
案の定、ナミは驚いた顔になる。春って入ってるし、普通は春生まれって思うよなぁ。けど、オレの生まれは、空が一番綺麗に見える夏。
クスリと嘲笑したように微笑ってやると、ナミはムッとした。
「……由来は?」
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