諜報

3/4
前へ
/101ページ
次へ
バットはスネークを目を丸くして見る。 スネークはその後も推測を続ける。 「‥‥年齢からして、高校卒業に伴い引き抜きを受け、技術者として入社。いわゆる天才。‥‥正社員は20歳以上が第一条件で入社できる。‥‥そこから察しがつく。‥‥どうだ?」 スネークはゆっくりと話してから最後に確認をとる。 バットは少しの沈黙の後口を開く。 「一応あっている。‥‥が僕が天才かどうかは定かでない。」 「そうだな。‥‥‥お前は馬鹿だ。」 その言葉にバットが顔をしかめる。 馬鹿と言われるのが、気にさわったらしい。 「‥‥能力売買は、能力をコピーし、他の者に書き込むもの。‥‥‥能力を取り除く事はできない。‥技術者の天才はそんな事も分からなかったか?」 俯くバットを見据え、スネークは表情ひとつ変えずに話しきる。 全て正しかったらしい。 バットは何も言い返さない。 スネークは外の雨音を聞き、沈みきった酒場を見渡す。 そして一点で目を止め、見開く。 スネークが睨みつけた場所には1匹の二十日鼠がカタカタと小刻みに震え、縮こまっていた。 蛇に睨まれた蛙、それと同様に蛇の弱肉強食の餌食となる鼠も動けなくなっている。 スネークはその餌に近づきしゃがみ込む。 「盗聴は止めろ‥‥ラット。」 この鼠はラットいや、自称オッサンの使役しているものだ。 これがラットの能力、鼠と話す事ができる。 この能力を使って危険な場所でも使役した鼠を送り、安全に諜報活動ができるのだ。 「さぁ‥‥行け。」 スネークがそう言って鼠の後ろを軽く叩く。 鼠はそれに弾かれるように、ちょこちょこと走りだし姿を眩ませた。 スネークは立ち上がるとバットを一瞥、その後カウンターに向かっていく。 「殺さないん‥‥ですか?僕は敵なんですよ。」 スネークはバットの方は見ずに答える。 「‥‥殺されたいのか?」 「どうして‥‥どうして僕を殺さないんだよ!」 目から流れでる雫が床に染みて模様を刻む。 外の雨音が大きくなり、バットの啜り泣く声と調和する。 「‥もう、生きる意味がないんだ‥‥もう人には、戻れないんだ‥、これからどう生きろってんだよ!化け物の俺は、どう生きればいいんだよ!‥‥殺して、ください‥‥お願いだから‥。」 嘆き、泣き、叫ぶ。
/101ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加