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バットはスネークを目を丸くして見る。
スネークはその後も推測を続ける。
「‥‥年齢からして、高校卒業に伴い引き抜きを受け、技術者として入社。いわゆる天才。‥‥正社員は20歳以上が第一条件で入社できる。‥‥そこから察しがつく。‥‥どうだ?」
スネークはゆっくりと話してから最後に確認をとる。
バットは少しの沈黙の後口を開く。
「一応あっている。‥‥が僕が天才かどうかは定かでない。」
「そうだな。‥‥‥お前は馬鹿だ。」
その言葉にバットが顔をしかめる。
馬鹿と言われるのが、気にさわったらしい。
「‥‥能力売買は、能力をコピーし、他の者に書き込むもの。‥‥‥能力を取り除く事はできない。‥技術者の天才はそんな事も分からなかったか?」
俯くバットを見据え、スネークは表情ひとつ変えずに話しきる。
全て正しかったらしい。
バットは何も言い返さない。
スネークは外の雨音を聞き、沈みきった酒場を見渡す。
そして一点で目を止め、見開く。
スネークが睨みつけた場所には1匹の二十日鼠がカタカタと小刻みに震え、縮こまっていた。
蛇に睨まれた蛙、それと同様に蛇の弱肉強食の餌食となる鼠も動けなくなっている。
スネークはその餌に近づきしゃがみ込む。
「盗聴は止めろ‥‥ラット。」
この鼠はラットいや、自称オッサンの使役しているものだ。
これがラットの能力、鼠と話す事ができる。
この能力を使って危険な場所でも使役した鼠を送り、安全に諜報活動ができるのだ。
「さぁ‥‥行け。」
スネークがそう言って鼠の後ろを軽く叩く。
鼠はそれに弾かれるように、ちょこちょこと走りだし姿を眩ませた。
スネークは立ち上がるとバットを一瞥、その後カウンターに向かっていく。
「殺さないん‥‥ですか?僕は敵なんですよ。」
スネークはバットの方は見ずに答える。
「‥‥殺されたいのか?」
「どうして‥‥どうして僕を殺さないんだよ!」
目から流れでる雫が床に染みて模様を刻む。
外の雨音が大きくなり、バットの啜り泣く声と調和する。
「‥もう、生きる意味がないんだ‥‥もう人には、戻れないんだ‥、これからどう生きろってんだよ!化け物の俺は、どう生きればいいんだよ!‥‥殺して、ください‥‥お願いだから‥。」
嘆き、泣き、叫ぶ。
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