実験体

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「君は能力売買がどうゆう物かは理解出来ているかい。」 「えぇ一応は。ある者の能力をコピーし暗号化、それを『Mother Computer』に保管。能力を買いに来た者の欲しい能力に合った暗号を再能力化し脳に書き込む。‥‥そんな所でしょうか。」 「よし概要が掴めているようだな。今度の実験はそれがわかっていれば十分だ。」 実験。どうゆう意味なのか。 志凪は少々の疑念を抱き始める。 「それで君の話からすると、能力を提供するのは誰なんだ?」 志凪の話の中ではある者と言った。 「能力売買で能力を買い取った人から値段を安くするかわりに他の能力をコピーさせてもらう、と記憶しておりますが。」 「あぁ、そうだな。しかしその前に買う能力が無くては誰も能力を買う人がいない。つまり、能力を提供する者がいないんだ。」 「そうなりますね。」 「そこで私は君を呼んだのだ。意味は分かるね。」 志凪に能力の提供を頼みたい、遠回しにそう言ったのだ。 今までに提供してもらってきた能力は存在している。 しかしその能力を買いに来た、つまり志凪や赤地からして、お客様に当たる方々に、新しく扱えるようになった能力を安全かどうか確かめる事なく提供してもらう事は出来ない。 だから志凪、つまり社員に最初の安全確認を頼むのだ。 「社員に拒否権は無い、ですよね?」 入社試験の面接で『能力の提供を頼まれた時、社員は拒否する事は認められない。』と説明されたのを思い出す。 「じゃあ付いて来てくれ。」 そう言って赤地は不敵な笑みを見せて立ち上がる。 志凪は焦る、もしかしたら今から試される新プロジェクトとやらが、とても危険であるかもしれない。 しかし自分に拒否する術はない。 志凪は目の前の不敵な笑みを恨み、無事でいられるように祈り、渋々ではあるが共に社長室を出る。 この後自分に迫る悪夢も知らずに‥‥。 「実験体Sの準備は整いました。」 何処か遠くから微かな声が聞こえた。 「プロジェクトSを開始します。5‥‥。」 志凪は鉄製の居心地の悪いベッドに手足、それに首を固定され朦朧とする中カウントダウンを聞いた。 実験体S?プロジェクトS?何なんだ?それは。志凪のそんな思いと裏腹に悪魔の刻は志凪への歩みを止めない。 「4‥‥‥3‥‥。」 志凪は最後にあの顔を見た。悪魔の顔を。 「2‥‥‥1‥‥。」 不敵にそして冷ややかに、モルモットをあざ笑う悪魔の顔を。 「‥‥ぜろ。」
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