終わりと始まり

3/4
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/86ページ
 正確に言おう。  事故になると分かりつつも、ふらふらっと道の真ん中に吸い寄せらていく少女がいた。  僕は少女を助けるために、自ら突っ込んで行ったのだ。  突き飛ばされた少女。  人々の叫び。  美しい金色を持った幼馴染が泣きながら助けを求める様子。  色彩を欠いた僕の価値観はこの出来事が起こる前から、全ての景色が暗い色使いだった。  しかし今はこれらの光景が本当に暗くなって行く。  このままでは、モノクロのようにしか見えていなかった世界も、いつも隣あった金色の髪も、二度と見ることは出来ないのだろう。  自分の事だからか、僕には把握できる。  このまま自分は死んでいくのだろう。  別に怖くはない。  僕の時間はあの時から止まっていたのだから。  千尋……  この世にはもう居ない僕の『しんゆう』の名前。  彼が居なくなって僕は生きる事を楽しむということを止めた。  その時から世界に色が無くなった。  だから僕の命は惜しくない。  もし、千尋が居たら同じことをしただろうから。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!