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正確に言おう。
事故になると分かりつつも、ふらふらっと道の真ん中に吸い寄せらていく少女がいた。
僕は少女を助けるために、自ら突っ込んで行ったのだ。
突き飛ばされた少女。
人々の叫び。
美しい金色を持った幼馴染が泣きながら助けを求める様子。
色彩を欠いた僕の価値観はこの出来事が起こる前から、全ての景色が暗い色使いだった。
しかし今はこれらの光景が本当に暗くなって行く。
このままでは、モノクロのようにしか見えていなかった世界も、いつも隣あった金色の髪も、二度と見ることは出来ないのだろう。
自分の事だからか、僕には把握できる。
このまま自分は死んでいくのだろう。
別に怖くはない。
僕の時間はあの時から止まっていたのだから。
千尋……
この世にはもう居ない僕の『しんゆう』の名前。
彼が居なくなって僕は生きる事を楽しむということを止めた。
その時から世界に色が無くなった。
だから僕の命は惜しくない。
もし、千尋が居たら同じことをしただろうから。
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