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一体何度気絶させられただろうか?
もう分からなくなったが、それでも打ち合いを終わらせる気はなかった。
……だってこんなに楽しい。
一撃入れられる毎に視界が明滅するが、構わない。
手足の痺れで運動性能が低下するのは困りものだが、それでも止まることなく踏み込み続けた…!
色「おぉぉッ!」
放つ。
振り落とし、返す刃でセイバーの側頭部目掛けて、一切の加減もなしに……文字通り全力を込めて撃ち込んでいく。
何も考えず、ただ無我夢中で。
疲労困憊の今、立ち止まれば心も体も止まる。
対峙するセイバーも少し疲れが現れたのか、動きに先ほどまでのキレはなかった。
――だが、それすらも頭にはない。
あるのは、ただ…。
色「は、はは……はぁ、はぁ、はははは…!」
ついていけてる、という喜びだけ。
あのセイバーと俺はこうしてマトモに打ち合えている。
体のギアをハイに叩き込み、魔術回路という名のアクセルを踏み砕く…!
勝てなくてもいい。
体の関節という関節が悲鳴を上げているが、その悉くを力任せに抑えこんだ。
色「ふっ…!」
刺突、右薙、斬り上げ、斬り落とし…。
あらゆる角度からセイバー目掛けて全力で撃ち込んでいく。
セイバー「くっ!」
だが、やはり、その程度でセイバーの守りは崩せない。
例えるならば、彼女は城壁だ。
小手先の剣術だけでは、いくら攻めたところで破砕は不可能。
ならばどうする?
簡単な事だ。魔術を使えばいい。
俺は魔術師なのだから、その方が理に叶っている。
500の魔術回路にありったけの魔力を込めて、踏み込む…!
だが、それに答えるかのようにセイバーは………音もなく聖剣を握った。
士郎「色ッ!」
祖父さんが叫び、俺に向かって何かを投げた。
それは、祖父さんの投影した、覇者の剣と称される絶世の名剣(デュランダル)…。
士郎「どっちも熱くなりすぎるなよ!」
何の躊躇いもなく、その柄を握る。
対する、セイバーは…。
セイバー「来なさい。その体力ではあと10分と保たないでしょう」
静かに限界寸前の俺を迎え入れた。
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