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第一章~聖杯戦争~
この時間独特の、澄んだ空気に包まれた朝の道場。
その中で、俺こと衛宮 色は一人の女性と向かい合っていた。
もちろん、それは談笑する為ではなく……ましてやお見合いのような色っぽい物でも断じてない。
竹刀を構え、眼前に立ちはだかる金色に包まれた女性は、その実、飢えた獅子を前にした時と同じような圧力を俺へと与えてくる…。
セイバー「準備はよいですか?色」
金色の女性、セイバーが静かに尋ねてきた。それに――。
同じく竹刀を構えて頷く事で、返答した。瞬間…!
なんの予備動作もなく強く踏み込んできた――!
視認すら許さぬと、音もなく打ち込まれた竹刀は、確実に俺の脳天を狙い振り落とされる。
意識を刈り取る一撃。
されど、これが実戦ならば俺は無惨にも真っ二つにされるだろう。故に…。
――バシィィンッ!
手に持つ竹刀を横に振り抜き、セイバーの一撃をいなした。
続けて、返す刃で彼女の首を砕きにかかる…!
――バシンッ!
…だが不発。
首を砕いた筈の一撃は、容易く防がれた。だけでなく、刺突の一撃が喉笛目掛けて放たれる。
色「ちっ…!」
全力で飛び退き、後退した。
一気に離した間合いは4間半、これならばセイバーといえども接近に2歩を要する距離だった。
セイバー「ふむ…」
金色の女性、セイバーは何か思うところがあったのか、小さく呟いて構えを解いた。
それはつまり、今朝の稽古は終わりだという事だ。
彼女に倣って、俺もまた構えを解く。
セイバー「強くなりましたね、色。今の貴方の技量ならば私でも一撃を入れるのは難しいでしょう」
色「…ふぅ、ありがとうセイバー。毎日俺に稽古つけてくれてるセイバーのおかげだよ」
セイバー「飲み込みの速い生徒を持ち、私も稽古に熱が入っただけです」
そう言うと、彼女は真剣な表情から一転して柔らかく笑った。
セイバー「さぁ、朝食をいただきに行きましょう。士郎の作る朝食が楽しみですから」
色「ああ」
頷き、俺は彼女の後ろにつき、歩きだしたのだった。
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