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……そして、朝食時。
セイバーは食べる。
そりゃもう静かに、でもさり気なく…既に彼女は白米3杯目も平らげようとしていた。
あの小柄で、細い体のどこに、あれだけの食物を取り込んでいるんだろーか?
まぁ、幸せそうだから良しとしようか…。
そういえば…。
今のうちにセイバーについて説明しておこう。
変わった名前のこの女性。
どうやら祖父さんと祖母さんの知り合いらしい。
らしい、というのも…詳しい話は祖父さん達が教えてくれないからなのだが…。
俺がこの家に引き取られた時から、外見が変わってないところを見ると、多分人間じゃあないんだろう。
もちろん、だからと言って彼女が俺にとって家族であることに変わりはない。
母のような…姉のような、俺から見たセイバーはそんな人だった。
セイバー「シキ」
色「ん?」
皆の食事も終わり、満足したのか、箸を置いたセイバー。
だが、何を思ったか、彼女は真顔で一言。
セイバー「私との鍛錬は今週末で終わりにしましょう」
色「は?」
何を言ってんだ、この人は。
なんだって急にそんなことを言い出すのか……わからない。
色「いや、だってまだ俺は…」
セイバー「むろん、貴方が魔術師(メイガス)として生きていくなら別です。ですが、貴方は違うのではないですか?」
色「なんでさ?」
問いに答える代わりに、彼女が見せたのは一枚のA4サイズの紙だった。
そこに書かれていたのは、進路希望調査書……先週の金曜日に学校で配布された物だ。
そう、今春から三年となった俺には、今は進路をハッキリと決めなければならない時期でもある。
セイバー「第一志望は進学…とありますね。何か目指す物があるからでしょう?」
色「……それは…」
そう、俺には目指す物がある。
祖父さんのように抽象的な夢じゃなくて、もっと具体的な夢が…。
そして、それを目指す為には今最も勉学に勤しまなければならない、というのも気付いていた。
だけど、俺は…。
セイバー「学生の本分は勉強です。…いいですね、シキ」
それだけ言うと、セイバーは居間から出て行ってしまう。
結局、俺は言い返せずに、学校に向かう準備を始めたのだった。
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