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森の中にある、そう大きくない集落が深夜に戦火に苛まれた。
どこからともなく降り注ぐ火矢に、住人は悲鳴を上げながら逃げ回っている。
その中に、女性とその女性の手を必死に握る、幼い子供の姿が合った。
「お母さん。どうしてここに魔物が襲ってくるの?」
幼い子供は少し息を切らせながら、母親に尋ねる。
「お母さんにもね……わからないの……今は逃げることだけ……考えなさい……あなただけでも……助けてあげるから」
母親はそう言うと子供の手を強く握り、ある方角へと走って行く。
その先には森林が生い茂っているだけだったが、母親が歌うかのように呟くと、木々が道を開くかのように人が一人通れる程の隙間ができた。
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