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「何故、畳みに手をつかねぇんだコラ」
沖田の姿は、土方の言う通り手が畳みにつかずにいる体制。さらに言うと頭を下げてない。
「目の錯覚ですよ、土方さん。俺が貴方に土下座をしたくないからって、そんな理由でしないわけないじゃないですか」
「それ本音だろ。じゃあ次は茶だ」
土方は既に入れてあったお茶を、沖田に差し出した。
「土方さんが点(た)てたですか?」
「そうだ。味わって呑めよ」
沖田は、茶碗を手に取り呑んだが、それは一瞬だった。沖田は顔を青ざめ、口を開きっぱなしにする。
「まずい。それより苦い……土方さん。俺が甘い物好きだと知ってこんな物出したんですか……?」
「茶ってんのはそんなもんだ。しっかり呑んだら帰す」
「鬼」
「鬼で結構だ」
土方は沖田に背を向けた。
沖田は茶碗を睨み続けた。
土方はちらりと沖田を見遣る。まだ呑めていない沖田。
土方は虐めすぎたかと、立ち上がり部屋を出た。
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