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耳に当てていた携帯をそばにあったテーブルに置いて壁にかけてある時計に目をやった。時刻は二十時か、と。
けれどそこで月野はぴたりと動くのを止めてしまった。
じっと時計を見つめたまま数十秒。そしてゆっくりと視線を別の方向へと動かす。
そうして月野の表情がふわりと柔らいだ。
視線の先にあるのは綺麗な箱に収められたまま机の上に置かれてある目覚まし時計――
月野はそのまま机の方へと近づいていった。そして取り出したそれは、先ほどまで一緒にいた女が――水島レナと選んだものだった。
そう、先ほどまで手の届く距離にいて笑っていた。じっとその目覚まし時計を眺めてから、親切に電池まで箱に入ってあったのを思い出してそれを時計の後ろの蓋を開けて差し込んでみる。
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