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「あぁ、そりゃあ和也が母さんの病気のことで初めて俺の前で泣いてくれた日だ。
それまでは……そうだな、お前が何を考えてるかとか、今の状況をどう思ってるかとか、父親のくせに全然分かってなかった」
恥ずかしい話しだけどな、と言葉を続ける。
「泣いた跡を見て、やっと分かったんだよ。
だから感謝してるんだ……あの日、お前に会ってくれたその子に。
病室でお前が母さんに言ったその子に」
少し恥ずかしかったのか、父親はすぐにカップを手に取り、ズズッと珍しく音を立てて中身を口に含んだようだ。
「ふーん……じゃ、俺寝るわ」
月野和也はそう言って、くっと中身の液体を飲み干すと父親にそう言って席を立った。
そこはやっぱり親子で、こういう時目の前にいられては微妙だろうという気持ちから。
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