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けれどすぐにそんな背中に声が掛けられた。
「和也……だからいつか、俺にも会わせてくれ……」
その言葉に振り向きはしなかったが、口を開いた。
「……あぁ」
スタスタとそのまま自分の部屋に向かっていく。
そんな姿を見て、息子の癖と同じように父親も口の端をあげて微笑んだ。
真っ暗な部屋に入ったとたんに眠気に襲われて、月野は鞄を手にしたままベッドへと倒れこんだ。
いつもは物音一つしない部屋。
なぜならここに掛けてあった時計は今、自分のマンションの方へと移ったわけなのだから。
けれど今日は……
月野は手にしていた鞄の口を開いて携帯と、そしてカチカチと規則的な音を立てる目覚まし時計の入った箱を出した。
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