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再び崩壊寸前のマンションに、一人向かう少女…
この場に彼女を止める人は誰もいない。
テツヤ
「さて…そろそろ行きますか」
ジュン
「あ…あぁ…」
リョウコ
「待って!まだ見送りが」
彼女の背中はまだ見えている。
きっとリョウコは彼女がマンションに入るまで見送りするつもりなのだろう。
テツヤ
「よし、さっさと病院に行こうぜ~」
リョウコ
「だから待ってって──」
テツヤ
「早く行くぞ!!」
リョウコ
「!」
オッサンはいつものオッサンとは思えない口調でリョウコに怒鳴り付けた。
サトル
「行こう…リョウコ」
リョウコ
「……」
リョウコは黙って俺の腕にしがみついて来た。
その腕は少し震えている…
サトル
(オッサン…損な役回りすまんな)
多分ジュンも気付いているだろうな…
あのマンションはもうもたない。
ネムルさんが入って行ったにしても、数分ももたないうちに崩れ落ちるだろう。
たとえ崩れた事でこちらに被害がないとは言え、崩れるとわかっている建物に一人の少女を行かせたとなれば…リョウコなんかは精神的に立ち直れなくなる可能性もある…
頭でわかっているのと、実際に見てしまう事では重度はまったく違うのだ。
それを思い、オッサンはこの場を早く離れるように促した。
テツヤ
「ごめんな~リョウコちゃん…」
オッサンは何か呟いたが、こっちにはよく聞こえなかった。
サトル
「…………」
俺達が建物から離れ、少し経った時、後ろから何かが崩れる凄い音がした…
けれど誰も振り向かず、俺達は病院を目指して歩き続けた……
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