六日目<残り一日>

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サトル 「あ、まだ閉めないでくれ」 ジュン 「ん?」 サトル 「いや、最後の事を日記に書いてから入れようと思って…」 ジュン 「そっか…ならこれはお前に預けとくよ」 サトル 「ん…すまんな…」 ジュン 「いいっていいって。それより早く出ようぜ」 サトル 「あぁ、行こう」 リョウコはまだ眠ったままだ… そんなリョウコを背中におぶり、俺とジュンは病院を後にした。 サトル 「リョウコ…頑張れ…」 ジュン 「…………」 俺の背中にいるリョウコは、明らかに弱っていた… 辛うじて呼吸はしているものの、体温は低く、鼓動も弱まっている… サトル 「頑張れ…頑張れ…」 ジュン 「…すまんサトル……俺病院に忘れ物しちまった………」 サトル 「…行ってやれよ……」 ジュン 「お前…」 サトル 「だが別れは言わないし、見送りもしないぜ」 俺はリョウコを背負い、少し後ろを歩くジュンへ顔を向けずに喋り続けた ジュン 「っへ!それじゃ邪魔者は退散としますか……」 サトル 「あぁ、散れ散れ」 ジュン 「はぁ……サトル!」 サトル 「あ?」 ジュン 「またな…」 サトル 「…おう、またな」 その言葉を最後に、俺の後ろを歩く足音は次第に遠ざかり、その内、暗い道の中で自分の足音しかしなくなった サトル 「無理して来なくたっていいっつーの…」 誰に聞かせる訳もなく、俺はそんな事を呟いていた。  ジュン 「…一人にしてごめんなリサ。もう兄ちゃん何処にも行かないからな…」 『そして私の手を払い、兄を待ち続けているであろうリサと言う少女を見掛けたら、兄がくるまで彼女の側にいてやってほしい─』 ジュン 「こんな馬鹿な兄ちゃん待ってたなんてな……そうだ、兄ちゃん今まで凄い冒険してきたんだぜ?」 病院に戻って来た少年は、少女だったであろう亡骸のもとで今までの出来事を語り尽くした…
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