誰が為に鐘は鳴る(後編)

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弾いたタイラントの右腕に沿って、そのまますべらすようにタイラントの顔面を狙う。 正確に言うと首あたりだ。 タイラントの右腕に沿って振り抜かれたミスターの右手刀は、見事にタイラントの首・・・ いや、頸動脈に突き刺さった。 簡単に言うと攻撃を弾いた後、その流れのままチョップで頸動脈を攻撃した的な感じだ。 だがその流れるような動きは、恐ろしいぐらいに早かった。 記憶が曖昧で間違っていたら申し訳ないが、後々聞くと少林寺拳法の『燕返し』の応用をどうしたとか何とか・・・ 「・・・ぐがっ!!」 さすがに鋼鉄の体を持つタイラントでも、頸動脈は鍛えようがなかったらしく、初めて味わった衝撃に苦悶の声をあげる。 そして文字通り間髪入れず、右手刀を戻す勢いでタイラントの腹に叩き込まれる左ボディストレート! !! オレは初めて見たのだが、その体に馴染んだような速度の連撃は、とても今思い付いた程度には見えなかった。 完全に無防備で食らったタイラントが衝撃で体を丸めると、ミスターは半歩離れていつもの構えに戻す。 「っしゃあ!」 タイラントは内臓に広がった衝撃の波紋に耐えきれず、前のめりに倒れ・・・ ・・・なかった。
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