誰が為に鐘は鳴る(後編)

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この大会の連戦は、見ている者が想像している以上に体力も精神力も削る。 たとえ休憩した所で、体力は回復しても腫れやアザ、ダメージというのは1日やそこらでは治らない。 当然それらを引きずりながら次の試合に挑むワケだ。 思えばミスターの様子もタイラント戦の最初からおかしかった。 普段のミスターだったら、あんなにもタイラントの打撃を食らわない。 相手の攻撃をガードしてから反撃、というのもあまりやらない。 もちろん全部が全部ではないが攻撃が当たる前に反撃するか、スピードでかき回す戦法を得意としていた。 タイラントもそうだ。 普段だったら底ナシとも思える体力で、相手が根をあげるまでプレッシャーをかけてしつこく追い詰める。 それが今では少し組み付くと、大きく呼吸を乱したり途中であきらめるような仕草さえ見られた。 2人共精神的な限界のリミッターが、明らかに早まっている。 毎日のように見ていたミスターに違和感を感じたのも、それらが理由だった。 試合後にミスターは語る。 『うははは!散々エージと稲本にやられたせいか、実は試合が始まる前から両腕も両足も重痛くてよ!』
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