誰が為に鐘は鳴る(後編)

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タイラントが攻めの体勢に入った時、もしかしたら気のせいかもしれないが・・・ わずかだが・・・ ほんのわずかだが・・・ ミスターの構えが変わった。 いつもは右腕を曲げながら、拳を顔の近くで構えているのだが、その拳がやや開き気味になる。 そして脇を微かに開くように右腕を軽く移動させた。 陽動か? それとも何かの牽制か? オレの頭にフッと疑問がよぎった時、タイラントの右ストレートが唸りをあげてミスターの顔面に迫る。 もしかしたらミスターの関節技を警戒しての選択かもしれないが、タイラントは打撃を選んだ。 弓を引くような大振りではないが、真っ直ぐド真ん中を狙った右ストレートだ。 多分ミスターは右ストレートが来る!と予期していたのだと思う。 ミスターも迷いや小細工が感じられない動きだった。 ミスターは気持ち開いた右腕で流れるように、それでいて力強く右ストレートを内から外へ弾く。 空手の受けにも似てるが微妙に違っていた。 そしてミスターは受けると共に・・・ 驚くべき行動に出る。
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