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「入るぞ…」
牙們の低い声が響き、障子がスッと開いた。
凜は牙們を見ると、少し強張った。昨日のこともあり申し訳ない気持ちもあったのだ。
「里のみんなが姫さんに会いたがってる」
牙們はちらりと凜を見て、視線を落とした。凜はまあと嬉しそうな声をあげ立ち上がろうとしたが、やはり足首が痛む。
牙們は乗れと言わんばかりに、自分の背中を凜に向け、しゃがんだ。
「その足では歩くのも難しいだろ。おぶされ」
凜は牙們の優しさに驚きながらも、素直に彼の背中におぶさり、肩に手を置いた。
子どもたちはその後をにやけながらついて歩く。
「牙們の兄ちゃん!姫様がね、お着物着せてくれたんだよっ♪」
ともえがご機嫌に跳びはねながら言った。牙們はその姿を優しく見つめ、良かったなあと言うと、ともえの頭を撫でた。
微笑ましいその光景を見た凜もつられて笑顔になってしまった。
凜は思った。
この牙們という男…見た目は恐ろしく、野蛮ではあるがその心は全く違った優しい男なのだと。
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