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貧しいところではあるが、里の者たちは気さくで良い人たちばかりであった。
中でもあの彦造という男は、ひょうきんでいつもみんなを笑わせているようだ。
里の若い娘たちは、凜に近づき、城での話をせがんだ。懐の鏡や、匂い袋を見せるときゃあきゃあと喜んだ。
「気立てのよいお人じゃのう」
遠くからそれを見ていた牙們に、長老と慕われる源之助が言った。
「ああ、それにあんなに美しいときた♪
俺は殿様とか姫様とかゆー身分のお人はもっとつんけんしとると思っとったが、凜様はほんに良いお人じゃ」
いつの間にか牙們の隣にいて、にこやかに言う彦造の言葉にまわりの者たちは頷いた。
牙們は楽しそうな凜の横顔を優しく見守った。
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