里での暮らし

5/6
前へ
/45ページ
次へ
貧しいところではあるが、里の者たちは気さくで良い人たちばかりであった。 中でもあの彦造という男は、ひょうきんでいつもみんなを笑わせているようだ。 里の若い娘たちは、凜に近づき、城での話をせがんだ。懐の鏡や、匂い袋を見せるときゃあきゃあと喜んだ。 「気立てのよいお人じゃのう」 遠くからそれを見ていた牙們に、長老と慕われる源之助が言った。 「ああ、それにあんなに美しいときた♪ 俺は殿様とか姫様とかゆー身分のお人はもっとつんけんしとると思っとったが、凜様はほんに良いお人じゃ」 いつの間にか牙們の隣にいて、にこやかに言う彦造の言葉にまわりの者たちは頷いた。 牙們は楽しそうな凜の横顔を優しく見守った。
/45ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加