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「凜姫は…わしの可愛い凜はどうしておるのだろうか。戦に巻き込まれやはり……」
凜姫がいなくなって数日が過ぎた。城の中はしんと静まりかえり、灯が消えたように寂しい。
凜の父である小国の殿、実継(さねつぐ)は悲しいため息をついた。
実継の目の前に座しているのは、伊藤鷹宗(いとうたかむね)という男。実継が最も信頼を置いている重臣であり、凜の許嫁である。
鷹宗は神妙な顔つきで実継を見た。
「生きていてくださることを祈りましょう。凜様のことです!必ずどこがて生きておいでです!」
鷹宗は実継を元気づけるようにそう告げて立ち上がった。
「凜様をお探しする人手を増やしましょう。必ず見つけ出すのです。」
実継は気のぬけたような返事を返した。
そうだ。
生きていてもらわねば困るのだ…
鷹宗はその切れ長な目に、冷酷な光を宿し、満月を睨んだ。
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