二人

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「だけどなあ…俺は寂しいだなんて思ったことはねぇんだ。里のみんなが家族だと思ってるからな。だから俺は俺らしくみんなを守る義務があると思ってる」 牙們は優しい眼差しで凜を見つめた。凜は彼のまっすぐな眼差しに少しためらい、うつむいた。 「わ、わたしはこの里の人たちはそなたに守られて…とても幸せだと思うぞ!」 凜はなぜか顔が熱く感覚を覚えた。牙們は立ち上がり、少ししゃがんで凜の頭を、軽く叩いて笑った。 凜は冷えてきたから部屋に戻るといい自分の部屋に帰っていった。本当は胸の鼓動が速くなり、どうしようもなかったからであった。 なかなかおさまりそうにないので、毛皮を深くかぶり無理矢理目をつぶった。 残された牙們も初めての気持ちに胸のはやるような、その反面心の和むような、不思議な感覚に包まれた。そしてもう一度月を仰ぎ、凜のことを思った。 綺麗な満月が、また雲に隠れようとしていた。
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