二人

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次の日、牙們と凜は湖に来ていた。 前に子どもたちから綺麗な湖があると聞いていた凜が、行ってみたいと言っていた場所だ。 なるほど水がとても澄んでいて、あたりの紅葉や木々たちが映っており、まるで鏡を見ているようだ。辺りには鳥たちのさえずりが響き渡り、魅了させられる。 これほどまでに美しい風景を見たことなどなかった凜は、まるで子どものように跳びはねた。 牙們は腕を組み、木に寄りかかって、幸せそうな笑顔を浮かべ、凜を眺めていた。しかし辺りの空気がピンと張るような感覚を覚え、眉間にしわを寄せた。 「牙們?」 牙們の異変に気づいた凜は彼に近づき、横に座った。 その時、藪の影から顔を覆面で覆い隠した数人の男たちがとびかかってきた。 牙們は瞬時に凜をかばい、近くにあった太い木の棒で男たちを叩きのめしていった。相手は真剣にも関わらず、牙們の力はとてつもないものであった。 一人、また一人と叩きのめされていく中で、あまりに見かねたのか主格らしい男の一声が響き、集団は一斉に身をひいた。 「大丈夫か!」 牙們はすぐに凜に駆け寄り、怪我がないか確かめると荒々しい息をしながら、その細い肩を強く抱きしめた。凜のぬくもりを感じ、凜の香りを感じ、少しずつ落ち着きを取り戻した。 「良かった…良かった、無事で。」 そう言って震える腕に力をこめた。凜は驚きに身を硬くしながらもそれに応えた。 牙們は凜を失うかと思うと恐ろしくてならなかった。震えが止まらず、冷たい汗が吹き出す。いつの間にこんなに凜のことを思うようになっていたのだろうか。 そして凜もまた同じように、牙們のことを愛するようになっていた。牙們のぬくもりを感じることで、凜の心はこれほどないまでに安心した。 鷹宗は城の中庭に出ていた。そこへ黒い覆面をした男が現れた。 「鷹宗様、凜姫様の居場所が分かりました」 鷹宗は男の言葉に目を輝かせた。 「でかしだぞ!それでどこなのだ!」 「これよりずっと山奥の、影隠れの里にいらっしゃいます…」
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