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ひんやりとした空気が山を包んでいた。
木々たちは黒い影をおびて精一杯伸ばした枝をざわざわと左右に揺らしている。
少年は一つ大きな溜め息をついた。
背中には細く頼りない体つきに似つかわしくない程のどでかい荷を背負っている。
中には魂の抜けた輩から頂戴した刀や槍、少しの金などが大雑把にくるまれているのだ。
それにしてもどうしよう…。来た道も分からぬ上に腹の虫まで鳴き始める始末だ。
へとへとに疲れてしまった少年は、その場にすとんとへたりこんだ。
空はどうしてこんなにも広いのだろう。
見上げるといつも、自分のちっぽけさを思い知らされる。そして何だか悲しくなるのだ。
そんな時、ふと月明かりの照らす方を見てみると、一人の女が横たわっていた。
少年は近づき、息を飲んだ。それはこの世のものではないと思うほど美しい女子であった。
白く透き通った肌、烏の濡れ羽のような漆黒の長い髪、細く高い鼻梁、真っ赤な唇。
少年は夢でも見ているかのような気持ちになった。
頬に手を当てると、ほのかにあたたかく、彼女が生きているのだと実感させる。
少年は一時頬に手を当てたまま見とれていたが、何か悪いことをしているような気分になり急いで手を外した。少年は少し離れたところから、その女子を見つめ、またため息をついた。
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