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牙們は肩から腕ににかけて傷を負っていた。それもそのはず、黒い集団たちは真剣で襲ってきたからだ。
凜は源之助に教わった薬草を摘み、懐から布切れを出し、手当てをした。
牙們の硬く太い腕が少し熱をおびる。
凜が傷跡に揉んだ薬草を当てると、牙們は痛みに顔をゆがめた。
「痛むか?」
牙們は口角をきゅっと結んで〝平気だ、ありがとう〝と言って笑った。
凜は牙們の笑顔を見ると、急に切なくなり彼を抱きしめた。そして厚い胸板に顔をうずめた。
牙們の鼓動が聞こえる。生きている牙們のあたたかさを感じる。
牙們は痛みなど忘れて、凜の細い体を包み、長く豊かな髪をいとおしむように撫でた。
このまま時が止まってしまえばいいのに……。
二人は時の流れを惜しむように、ただただ抱き合った。
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