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凜姫は話が終わると意を決したようにその目に力を入れた。 「皆、わたしのことを総出で探していることでしょう。一刻も早く城に戻らなければ!」 威勢よく立ち上がったは良いが、右の足首に激痛を覚え、よろよろと倒れてしまいそうになり、運良く牙們の力強い腕に支えられ助かった。 「足をくじいちまったみたいだな…」 牙們は風太をじっと見た。風太はハッと何か思い出したように側にあった荷物をあさりはじめた。 「たしかこの中に貼り薬もあったような…」 「その中は何です?」 凜姫はいぶかしげに風太の行動を眺めていた。 「刀に槍、金も少々♪戦場からおいらが頂戴してきたんだ♪確かこの中にくじいた時に効く貼り薬が…」 風太はそこまで言ったあと何だか先程とは違う空気を感じ振りかえった。 「そなたたちは盗みを働くのか?」 凜姫がまるで別人のような冷ややかな目でこちらを見ている。風太は言ってしまったことを後悔したがもう遅い。 「そのような低頭な輩に助けていただくほどではないっ!やはりわたしは城に帰る!」 ものすごい剣幕でそう言って二、三歩進んだはいいがやはり足が痛いのか顔を歪め、小さくうずくまった。 牙們が駆けより手を貸そうとしたが凜姫はそれを振りはらった。 牙們はふぅー…と呆れたような溜め息をもらし静かに言った。 「そんなに城に戻りたければ戻るがいい。しかしその足でこの広い山道を抜けられるのか?ただでさえここに住む奴らも迷うほどの深い深い山奥だ。 夜には狼も、もののけも出るという。山蔭に潜んでる敵方の奴等もいるかも知れん。 それでも帰りたいと言うのなら、好きにするがいい。ただし手助けはせぬ。」 そう言い残し去っていった。風太は普段見ない牙們の様子に呆気にとられていた。 凜姫は何も言い返すことができず悔しさのあまり、下唇を軽く噛んだ。
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