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「お頭があんな風に言ったの見たのは初めてだよ」 風太は凜姫の足首の手当てをしながら言った。 上手く丸め込まれたというか、説き伏せられたというか…凜姫もあのような男は初めてであった。 「あんたみたいな気の強い女も初めてだけどなっ」 風太はいたずらっこのような笑みを凜に向けた。 「わたしは盗人(ぬすっと)のような小賢しく、卑怯な真似をするやつが嫌いなだけだ!」 風太は面と向かって指摘され少し落ち込んだ。 「おいらたちだって好き好んで盗みをやってる訳じゃないよ! …だけど!生きるためには仕方ないことなんだ! お頭だってこの里を守るために必死なんだよ。お城で何不自由なく暮らしてるあんたには分からんかも知れんが…」 手当ての終わった凜の足を軽くぽんっと叩いて風太は立ち上がった。 「…あ、ありがとう」 風太はにこりと微笑んで出て行こうとした。そんな風太を凜姫が呼び止めた。 「そなたの頭に伝えて欲しい。先程はすまなかったと…、それと…少しの間世話になると…。」 風太は恥ずかしそうに言う凜を見てフフっと笑った。 「そなた。名は何という?」 「おいらは風太。そしておいらたちのお頭は牙們ってんだ♪強そうな名前だろっ!もちろんすっごい強いんだ!」 風太はそう言い残し、凜姫に手をふって部屋を出た。 「がもん…」 凜姫は風太の背中を見送りながら呟いた。
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