1年 12月 下章

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『おお、新入り。頑張っとるか?』 『まずはランキングをしてケガしにくい体に鍛えとけ。無理しすぎても元も子もないからな。』 『俺?俺は遊びに行かんのかって?アホゥ!そんな事してたら練習できないやんけ!』 快楽に溺れている先輩達の中で、この人だけが毎日練習に出ていた。 何より、楽しそうに野球をしている人だった―――。 「…胸くそが悪いです。いつまで1年生の教室に居るんですか? 明日香ならとっくに居なくなったし…用はすんだんじゃないですか?」 「………。」 外藤さんは黙って立ち上がると、ゆっくりと教室に出ていく。 廊下まで出たとき、ぴたりと止まった。 そして絞り出すように声を出す。 「…俺が見たところ、教室に残っている生徒が狙い目や。そいつらは暇してるやろ。 …頑張れよ。」 部員集めの事を言っているんだろうか。自分は気楽な帰宅部になったくせに、気安く頑張れだと? 「言われなくても、そのつもりです。」 最後の最後まで。 俺は外藤さんを罵った。 そして外藤さんは帰っていった。
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