1年 1月 上章

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「お、俺に何か用ですか?」 ゆっくりと振り向いて、絞り出すように声を出す。 「ああ、君の野球センスを見込んでいい話があるんだがね」 目の前の男性はさっきと違って温厚な表情。にっこりと笑うと、手慣れた口調で話しかける。 えっ、この人は、今俺の野球センスがどうだとか言ってなかったか…? …トクン。 胸の奥から、かすかな希望が芽生え始める…。 「ひょっとして…プロ野球のスカウト?」 「はははは。いや、スカウトには違いないんだが、プロ野球じゃなくて、高校のスカウトさ」 へ? 「うちの会社と契約すれば、プロに入る為のお膳立てをしてあげよう。 まず極亜久高校から、設備のしっかりした大東亜学園に転校させてあげよう」 そんな並ばれたような言葉が投げられる。…この話、俺に向けられているんだよな?いまいち現実味がない。 「で、でも…俺には極亜久高校の仲間が…!」 「君はプロ野球に興味があるようだね? 君は今高校生。遊んだり、友達と出かけたり恋愛、楽しい事がたくさん出来る時期だろう。でもね、」 そこで一度区切って…そっと囁く。 「君は、そんな生活を送っている内に、夢を叶えようと努力している人もいるんだよ。」 ……………!! 「さあ、どうする? 今のこのまま時間を無駄に過ごすか…夢を叶えるか」image=301258580.jpg
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