1年 1月 上章

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「武田君…本当に陸上部を止めてよかったのかい?」 武田君に改めて向き合って問う。 でも俺の心情とは違い、彼はさも当たり前のように答える。 「いいッスよ。男に二言はないッス」 「だけどせっかく続けてたんだ…水野のことだって…」 俺はあの勝負…勝つことができた。 お互いに力を出し尽くした勝負。 「いちいち首を突っ込むアンポンタンじゃねえッスよ。それに…」 「水野も俺も、甲子園に行くのを本気で信じているッス」 …しんと一瞬の静寂。 ばか、言葉を継ぐのは俺の役目だろうが… 武田だけじゃない、みんなだってそうだ。甲子園の土を踏むには高校生活丸々費やすことになる。また、その土さえ踏めなくもなるかもしれない。 それを分かって… 「パワポケ君。君はどうやらおかしな考えをしているようだね」 顔を上げると水原君が俺に向かって話しかける。 「甲子園に行ける行けないじゃなくてやるかやらないかだろ? 君は…やらないのかい?」
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