1年 1月 下章

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「はっ!」 「ど、どうした!?」 「不覚ッ…この平山…一生の不覚ッ…!」 見れば顔面蒼白、ぶるぶると震えだす平山君。 日の出を見て、神社にいて、今みんなで心を一つにしたというのに…何がいったいどうしたというのだ…!? 「く…何て事だ…今まで忘れる事が無かったってのに…!ああ、もうどうしたら…」 「…落ち着いて平山君。何がどうしたんだい?」 「ああ、パワポケ…実は…」 そしてとうとうその重い言葉を口に――― 「…酒屋の息子である俺が、まだ甘酒を飲んでいない…!」 「家に帰って一人女々しく飲んでろ」 はあ…やれやれ。平山君の、おそらく今年最もどうでもいい話を聞いた所為で気分が削がれたよ… 「お…俺も…今まで忘れてた事が…」 「安田!?お前も何か思い当たる事が?」 「おう…どうしよう、俺はこのままずっと時を封じられ、ずっと高校生の姿のまま過ごさなくてはならなくなった…!」 「…安田?」 いつも自信家の安田も見れば体を強らばせ、震えているじゃないか… しかも、ずっと高校生の姿とか…もしかして安田は――― 「…安田。俺は例えお前が宇宙人でも未来人でもありのままのお前を受け入れるつもりだ…だから、話せよ?」 「…パワポケ…俺…」 「年越しそば、食ってない。どうしよう」 「やっぱすっげえどうでもいい事だったな」 「ざけんなっ!俺は年を越せねんだぞ!ずっと高校生のままじゃないか!! くそ…去年の秋から、一切そばなんて口にしなかったというのに…」 「案外お前ピュアなのね!?」
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