1年 11月

8/31
前へ
/180ページ
次へ
…それにしても学校とはいえ、2人きりだと緊張する。 ちらっとパワポケ君を見る。 どうもさっきから、数学の証明問題にてこずっているようだ。さっきから書いては消し、図形とにらめっこしている。 …なんも意識していないんだなあ…。こっちの気も知らずに。 空はもう黄昏始め、夜の訪れを知らせる。 もう少しで7時半を回る。空気も冷えてきた。 ふと小学生の時を思い出す。 小学生の時も、こんなのあった、あったはず。 まだお互いサンタクロースがいることを信じていた歳ぐらい。 その時はまだ私の方が、身長が高かった。 …昔はこうやって2人でよく宿題をしていた。 その時も彼はこうやって頭をかかえて一生懸命問題を解いていた。 でも、それもちょっとの間だけ。 パワポケ君の家庭で、゛ある事゛が起こった。 それはいきなり。本当は―――。 …この話は止めよう。 小学生の話になると、いつもこれだ。 彼がそこにいるのに、口滑ってしまったら気を悪くする。 こう見えて、パワポケ君は傷つきやすく、繊細であることを私は知っている。 おそらく、私だけ――――。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加