1年 12月 上章

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「コラコラ、そんなところに居ると、危ないッスよ。」 向こうからランニングシャツと短パンの格好をした男性が見える。 しなるように腕を振り、走って向かっている。 冬の寒気など微塵にも感じていないようだ。 …ん?待てよ、鉄球が飛んできた方向から来たってことは…。 「今のは、君が投げたのかい? あんなに遠くの、あそこから?」 男性は目の前までやって来て止まった。 近くで見ると、腕から足まで分厚い筋肉で覆われているのがよく分かった。 分厚い筋肉に覆われたその男性は自慢の腕力を褒められ、上機嫌になる。 まるで赤子に返ったように、ニマーと笑う。 高校生男子が目の前でそんな顔いても気持ち悪い。 「えへへ。 ちょっと気分が乗っていたので、肩を使って投げてみたッス。」 普通、一発で、肩を壊すぞ…。砲丸投げは、腕を前に伸ばして押し出すようにする投法で、野球のように腕を回すとすっぽ抜けるか肩が耐えられない。 と、その時、 「…死ぬかと、思ったでやんす。」 亀田君がむっくりと起き上がった。 普通、死ぬぞ。 あんなの頭にぶつかって、たんこぶひとつと眼鏡にヒビが入るだけってどういうことだい。
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