1年 12月 上章

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「な、なんでやんすかアイツの速さは!?」 まばたきでもしてみろ。それこそ全く見えない。 「おー、またアレやっているのか。」 いつの間にかギャラリーとして陸上部員が集まってきた。 いま、ポツリと声を漏らしたのはウチのクラスメートだ。 「また、ってのは何でやんす?」 「んー?ああ。俺たち陸上部は、部活道具を片付けたりする時はジャンケンでやってたんだよ。」 「ジャンケン…?」 「そ。んで普通にジャンケンしてもつまらないって誰かが言って、この『ぐーちくぱー』をやり始めた訳。 やり始めた時は、いつもあいつが負け越してた。」 「…話が見えてこないでやんす…。」 「まあ、聞けよ。 それで武田の奴は相当負けず嫌いでな。手首のスナップを利かせるために特訓したってハナシだ。 そして遂に、鉄球を手首のスナップで投げれる程にまで鍛え上げた。 俺達がその時に気付いた時には、あいつは常に勝ち始めるようになった。」 「スナップ…?」 「武田の強さは太っとい手足じゃねぇ。…鍛え上げた手首だ。 元々備わった腕力と手首、しかもいつも連勝している『ぐーちくぱー』。 分かるか…?あいつが武田に勝つなんて無理なんだよ―――。」
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