1年 12月 上章

18/26
前へ
/180ページ
次へ
「い、いや!? すぐ終わるし、それに私お迎えが…。」 これって実質的にデートじゃない!? でも、私が行きたい人は…。 「そうかい。そりゃ助かった。僕も練習があるからね。」 「野球?」 「ううん、ピアノ。」 水原君はピアノと両立するとか言ってたっけ。 「そっか。それじゃ頑張ってね。」 「うん。じゃ。 …あ、最後に一言。」 え? 水原君は私の目をじっ、と見つめて最後に言った。 「なんで野球なのか。 それは彼が野球部に入ったのと同じ理由。」 え?同じ理由…。私はあの日の記憶を探り出す。 10月。パワポケ君が亀田君を野球部に誘った時。 『今は秋よ。まだ、どの部にも入っていない人はそんなにいないわ。』 これはようこ先生が言った言葉。その後パワポケ君は苦い物を口にしたような顔をしてリアクションをする。 『うっ。じゃあ、ほかの部から引き抜かなきゃならないのか。』 難しいでしょうね。とようこ先生は返答する。 『別のスポーツで頑張った方が…』 『野球じゃなきゃ、駄目なんです。』 この時。彼がおどげていた雰囲気は一気に消し飛んだ。 目は本気、見るものを臆させる程の闘志。 また…それは彼の絶対的な意志でもある。 プロ野球になる、その夢を実現させる為に野球を捨てないという信念。 これがパワポケ君が野球をしている理由なのではないか。 …まてよ。水原君は…?
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加