1年 9月

4/10
前へ
/180ページ
次へ
先輩たちは遊びに行って、外藤さんはどこかに行ってしまった。 部活を見回す。 昨日は外から見ただけだったが、今はこの部屋にいる。臭いに耐えきれず、窓を開ける。 酷く臭い。先輩たちは、鼻が慣れるまで今まで遊んでいたのか…? 壁を見ると、謎のコスチュームが掛けてある。何に使うか分からない。 俺はこのまま居ても仕方がないと思って練習することにした。 「おう、新入り。頑張っとるか?」 外藤さんは先に練習していた。あの先輩たちと遊びに行ってたと思っていたが、俺はなんて失礼なことを考えていたのだろう。 「はい!」 思いっきり返事をした。 「練習熱心なのは結構やけど、ケガには気ィつけよ。」 さっきは殴られたりしたけど、この先輩は見た目よりも良い人なんだと実感する。 「ところで、外藤さん以外の人は、全然練習しないですね。」 「まぁな。野球するために、この部に入ったやつはおらんからな。」 やっぱり、あの人たちは高校生活の大半を怠けて過ごしていたんだな。でも野球は9人でやるものだ。 先輩たちには戻ってきて欲しい。 「俺たちが練習を続ければ、それを見てみんなもやる気を出してくれますよ。」 「アホぬかせ。『ナマイキや』言うて、2人そろってシメられるのがオチや。」 「ふぅ…。 こんなんじゃ、プロへの道は遠いなぁ…。」 「プロ!? お前、プロになるつもりなんか? こりゃ、笑えるわ。ぎゃははは。」 外藤さんは腹を抱えて笑い出す。 バカ笑いする外藤さんにムッときた。 「笑い事じゃないです。 俺は、本気でプロを目指しているんですよ。」 「まぁ、聞けや。 この学校は、元々別の名前があったんや。 それがいつからか、極亜久(ごくあく)高校と呼ばれるようになってしもた。まぁ、それぐらい評判が悪い、というこっちゃ。 そんな所に、プロのスカウトが来るわけ無いやろ?」 「……。」 「お前も夢見とらんと、人生楽しめや。 ほんじゃ、先に帰るわ。」 「…… 俺は、絶対に諦めないぞ!」
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加